2009
Okayama
23年前に5人家族の構成で建てた家に、現在一人で暮らしているクライアントは、これから変化していく生活形式や家族構成に現況の細かく仕切られた空間では対応できないと考え、あらゆる可能性を見据えた融通性のある快適な空間にしてほしいというものだった。構造上取れない壁がある制約の中で、囲まれていながら広がりを感じられる空間を目指した。その作法として「具」のしつらえである。耐力壁を隠すように造り付けた「家具」で空間に立体感と人の拠り所を与え、耐力壁と家具の間に収納した「建具」があたかもそこに扉がないような意匠を生み出した。長年、大学で音楽を教えてきたクライアントは、一線を退いた今も音楽は生活の一部であり中心である。その遺伝子を受け継ぐ家族が集まれば自然と演奏会が始まると言う。「具」が創り出した住空間は、音や気配を穏やかに繋げるものとなり、合理性・機能性・将来性を合わせ持つフレキシブルに対応できる限りなくワンルームに近い空間が実現した。